妊婦さんとご家族へ伝えたい大切なこと

9. 性器クラミジア感染症

■どのような病気ですか?
・クラミジア・トラコマティスという病原体によって引き起こされる、日本で最も多い性感染症です。
・性行為により膣(ちつ)から入り込んだクラミジアが子宮の出口(子宮頸管(しきゅうけいかん)といいます)に感染することで炎症が起こり、おりものが増えたり、少し出血したりします。しかし、このような症状が表れないことも多く、治療せず放っておくと、図のように子宮頸管から、子宮、卵管(らんかん)を通ってお腹の中にまで炎症が及び、性交時などに下腹部に痛みを感じることがあります。
・卵管は精子や受精卵の通り道なので、卵管の中で炎症が起こることで不妊症につながることがあります。肝臓にまで炎症が及ぶこともあり、その場合は激しい腹痛が起こり、重症となります。

・妊婦さんがクラミジアに感染していた場合、子宮頸管の炎症が赤ちゃんを包んでいる膜(絨(じゅう)毛(もう)膜(まく)や羊膜(ようまく)といいます)に及ぶことで、流産(りゅうざん)や早産(そうざん)を引き起こすことがあります。また、お産のとき、クラミジアに感染している産道(さんどう)を赤ちゃんが通ることで、赤ちゃんにも感染が起こることがあります。赤ちゃんの目に感染すると、新生児(しんせいじ)結膜炎(けつまくえん)、肺に感染すると新生児(しんせいじ)肺炎(はいえん)などを発症します。
・もちろん男性にも感染します。男性に感染した場合は、尿道(にょうどう)に炎症が起こり、排尿時の痛みを感じたり、尿に膿(うみ)が出たりします(尿道炎(にょうどうえん)といいます)。

■妊婦健診で行われるのはどのような検査ですか?
・綿棒を用いて、子宮の出口から直接おりものを採取し、クラミジア・トラコマティスを検出する検査を妊娠30週頃までに行います。
・妊婦健診のときの検査で初めてクラミジア感染が分かる妊婦さんが2~3%いらっしゃいます。

■もしも結果に異常があった場合は、どうなりますか?
・クラミジア・トラコマティスが検出された場合には、アジスロマイシンあるいはクラリスロマイシンという抗菌薬による治療を行います。もちろん、妊婦さんが飲んでも問題ないお薬です。
・治療して3~4週間後に再度検査を行い、クラミジア・トラコマティスが検出されないことを確認します。
・再感染を予防するために、必ずパートナーとペアで治療しましょう。パートナーは、泌尿器科を受診して、検査を受けて必要があれば治療も行ってください。お2人の治癒が確認されるまでは、性交渉の際にはコンドームを使用するようにしましょう。

■出産後に気をつけることはありますか?
・再感染に注意してください。また、ほかの性感染症が合併していることもあるため、心配なことがありましたら医師に相談してください。

一覧へ戻る