11. CMV (サイトメガロウイルス)
■どのような病気ですか?・健康な人がCMVに感染しても発症することは少ないため、ほとんどが気付かずに感染しています。乳幼児の尿や唾液にCMVが含まれていることが多く、子ども同士でうつし合うことが一般的です。
・CMVによる母子感染には、経胎盤感染、経産道感染、経母乳感染の3つがあります。最も問題となるのは、妊娠中(特に妊娠初期)に起こる経胎盤感染です。胎内感染や先天性感染とも言います。
・経胎盤感染した赤ちゃん(先天性サイトメガロウイルス感染症や先天性サイトメガロウイルス感染児と言います)では、胎児異常(脳、内臓、発育、羊水の異常など)や新生児異常(脳、内臓、発育、耳の聞こえの検査の異常など)、神経学的異常(聴力、視力の異常など)、発達の異常などが出ることがあります。また、胎児異常や新生児異常がなくても、後になって神経学的異常や発達の異常などが出てくることもあります。
・胎児異常や新生児異常を認める先天性感染児(症候性感染児と言います)では、神経学的異常や発達の異常を減らすために抗ウイルス剤が新生児期~乳児期にかけて投与されます(注射や内服)。
・妊婦さんは未感染(みかんせん)、初感染(しょかんせん)、非初感染(ひしょかんせん)の3グループに分けることができます。妊娠前に感染しておらず妊娠中にも感染しなかった妊婦さんが未感染、妊娠前には感染しておらず妊娠中に初めて感染した妊婦さんが初感染、妊娠前から感染している妊婦さんが非初感染です。国内では妊婦さんの34%が未感染、1%が初感染、65%が非初感染であると考えられます。
・経胎盤感染を起こしてしまう妊婦さんは、初感染と非初感染の妊婦さんです。初感染の約40%、非初感染の約1%が経胎盤感染を起こしてしまいます。
■妊婦健診で行われるのはどのような検査ですか?
・血液検査の中で、CMVの抗体(IgG抗体とIgM抗体)検査が行われることがあります。基本的には保険適用はありません。
・IgG(-):陰性の場合は未感染であり、妊娠中の感染予防が勧められます。感染予防には、乳幼児の尿や唾液との接触を避けることや、コンドーム使用のない性交渉を避けることなどが含まれます。
・IgG(-):陰性から妊娠中に(+):陽性へと変化した場合は初感染です。
・IgG(+):陽性、IgM(-):陰性の場合は非初感染です。
・IgG(+):陽性、IgM(+):陽性の場合は初感染の可能性があるため、IgG抗体アビディティーという精密検査が追加されることがあります。
■もしも結果に異常があった場合は、どうなりますか?
・基本的には妊婦健診、分娩は通常通りで問題ありませんが、胎児異常を認める場合には専門病院へ妊娠中に紹介となる可能性があります。
・初感染の妊婦さんや初感染の可能性がある妊婦さん、何らかの胎児異常または新生児異常を認める非初感染の妊婦さんなどでは、赤ちゃんの尿サイトメガロウイルスDNA検査が行われます。保険適用がある検査なので担当医に確認が必要です。
・赤ちゃんの尿検査により先天性サイトメガロウイルス感染児と診断された場合には、精密検査や治療のために赤ちゃんが専門病院へ紹介となる可能性があります。
■出産後に気をつけることはありますか?
・特にありませんが、未感染の妊婦さんでは次回の妊娠を考えた際に感染予防について思い出し、次回の妊娠の早期からの実行が望まれます。
参考文献
Toriyabe K, 他. Anti-cytomegalovirus immunoglobulin M titer for congenital infection in first-trimester pregnancy with primary infection: a multicenter prospective cohort study. J Perinatol 2017, 37(12):1272-1277.